2023年04月10日

高知旅行記(7)

時計を見ると9時50分。高知駅前に戻るバスは毎正時に発車する。予定ではもうしばらく滞在するつもりだったが見るべきものは見てしまったし、公園内の飲食店もまだ開いてないので10時ちょうど発のバスに乗ってしまう。来た道を戻り、桟橋通五丁目バス停で下車する。少し歩くと昨日瞥見したとさでんの桟橋車庫。留置された電車群を出来るだけ近くで見たかったが車庫の入口に「許可なく当社敷地内への立ち入りを禁じる」と書かれた看板が立てられていたのでやむなく遠目に眺めて写真を望遠で数枚撮るにとどめた。もし車両見学会のような催しがあるなら是非行ってみたい。自分みたいなオッサンは浮きまくるかもしれないが。
ところで鉄道紀行作家の宮脇俊三氏は桟橋車庫前と桟橋通五丁目との駅間はなぜこんなに短いのか、という疑問を著作の中で何度か書いている。当方は現在の位置に車庫が設けられた際に桟橋車庫駅ができたからかな、と思っていたら違った。確かにとさでんの現車庫はかつてはりまや橋交差点から600メートルほど東の知寄町にあった車庫を昭和62年に移転したものであるが、桟橋車庫前電停は桟橋停留場という名で車庫の移転前から存在していたらしい。後から桟橋線を延伸して出来たのは桟橋通五丁目電停のほうで、戦前には土佐和紙を積んだ貨物列車を伊野からここまで引き込み高知港に入港した船舶に積み替えていたらしい。確かに僅か200メートル足らずとはいえ、人手でもって運ぶのとレールの上を転がして運ぶのとでは必要な労力は大幅に違ったであろう。
さて車庫を見学したのちとさでんで高知駅前に戻り、ネット検索で見つけた駅から徒歩15分ほどの良さげなラーメン屋で昼食を摂り、またぶらぶら歩いて高知駅に戻る。途中にあった公園の形の良い桜をしばし鑑賞する。半分くらい花は散っているけれど、残った花の薄桃色とその間に覗く若葉の初々しい緑との対比が美しい。
高知駅で帰りの特急の発車時刻までの時間を使って土産物コーナーを物色する。実のところこれといったものはあまり見つからなかった。海苔佃煮やカツオの生節は徳島でも手に入るし、観光地にありがちな土地の名士や名所の名前だけ借りた菓子類にも食指は動かない。地酒は滞在中いろいろ飲んだしこれも徳島のそこそこ品揃えの豊富な酒屋に行けばすべてではないにせよ手に入る。結局高知の地場で長年の実績のある菓子店の和菓子と、高知の産んだ偉大な植物学者である牧野富太郎に因んだという謳い文句のコーヒー入りクッキーを買う。ところで当方にとってもっとも親しみを覚える高知人は物理学者にして随筆家・俳人である寺田寅彦なのだがこの人に因むものは結局今回の旅行ではついぞ見かけなかった。高知人で言えば小説家の有川浩さんの作品も良い。あと漫画家の西原理恵子さんの出身が高知であったことはとさでん電停の広告看板で今回初めて知った。

(続く)
posted by とりぷる at 11:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック