
アレクサンデル・モイゼス (1906-1984 スロバキア) :
交響曲第9番 (1971)、交響曲第10番 (1977-78)
ラディスラフ・スロヴァーク指揮 スロヴァキア放送交響楽団
録音 : 1995年6月26-30日 (第9番) 1994年2月7-11日 (第10番)
(Naxos 8.573654) (旧盤 : Marco Polo 8.225092)
スロヴァキアの作曲家モイゼスの交響曲第9番(1971)は「人生の回顧」をイメージさせる作品である。老境に差し掛かった作曲家がそれまで過ごしてきた人生、それも苦しく辛いことも多かったであろう人生を振り返る・・・そのような想像を引き起こす。ただ過去の思い出に惑溺してしまうのではなく、まるで一編の映画を一歩離れた位置から見つめているような、そのような冷静さも感じさせる。「9番」という運命的な数字が作曲家の楽想をそのような方向に向かわせたのであろうか。ただショスタコーヴィチがこの時期すでに交響曲第14番(1969)および第15番(1971)を書き上げているのでこれはうがった見方かもしれない。
それに対して交響曲第10番(1977-78)はまるで対照的な性格を有する作品である。まるで第9番を書き上げて肩の荷が下りたかのようであり、70歳を超えた老人の書いた音楽とは思えぬほど明朗かつ強靭、なおも前進しようとする意欲にあふれており、しかもそれだけではなく実にしなやかで美しい。これは10番だけでなく9番でも感じられることだが、作曲家の洗練された色彩感豊かなオーケストレーションの技法はどこかフランス近代の諸々の大作曲家の作品を想起させる。
モイゼスはその後、さらに2曲の交響曲、第11番(1978)と第12番(1983)をものすることとなる。第12番はなんと作曲家77歳の作。実に元気なジイサンである。
それにしてもこのモイゼスの作品集といい、あるいはリャトシンスキーやライタの作品集といい、マルコポーロから出ていた旧盤ではいずれも実に趣のある絵画がアルバムアートに使用されていたのに、ナクソスに移行して再発された盤ではそれらがわりとどうでもいい風景写真に置き換えられており、マルコポーロのアルバムアートを一度見てしまうと実に味気ない。なので当方の購入した盤はナクソス盤ではあるがジャケ画像はネットで拾ってきたマルコポーロのものを使わせてもらった。同じ絵を使っても良かったろうとは思うが、もしかすると権利関係の問題があったのかもしれない。
このモイゼスの作品集は去年ボックスで買ったものの今までほとんど放置していた。ほかにも同様の盤が大量にある。最近はなかなか気持ちを落ち着けて音楽に親しむ時間が取れていないが、いい加減消化していかねばならない。