出発する。勝手に3D表示になる。変針すべき地点にある程度近づくとスムーズにカメラが動き2D表示に切り替わる。そして自車アイコンと変針予定地点の両方を視界に収めつつ次第にズームする。変針地点で進路を変えるとまず自車アイコンが変針方向に首を振る。それから遅れて地図が逆方向に回転し、それについて回るようにして自車アイコンが正面に向き直る。変針が終了するとカメラが引きながら3D視点に戻る。
文字にすれば何ということもないのだが、このようなナビ画面の動きを(もちろん運転中は凝視しないようにチラチラと)眺めていると、実にその動きが小気味良くて面白い。まるで自車アイコンがただのアイコンではなく本物の車を空撮しているように見えてくる。自車アイコンやマップの回転もただダイヤルをひねるような動きではなく、ゆっくり動き出しスッと加速してそこから減速して止まるべきところに落ち着く、という「運動」を感じさせる挙動になっている。そこがまた気持ちいい。このへんはAppleマップをナビとして使ったことがないという人にもぜひ試してもらいたいところ。
ここ何日か続けていくつかの主要なカーナビアプリを試しているが、Googleマップ、Yahooカーナビ、カーナビタイム、そのいずれもAppleマップのような気の利いた動きを見せてはくれない。自車アイコンは頑ななまでに正面を向いたまま。変針すると地図だけがネジを回すようにぶっきらぼうに回転する。情報が見られればそれでいいだろと言わんばかり。アプリによっては交差点等の拡大図を別窓で出してくれるものもあるが、Appleマップのような自然な拡大縮小は行ってはくれず、自分で+ボタンや−ボタンをタップしなければならず非常に面倒である。対してAppleマップは上述のようにカメラが自動的に見やすく切り替わる仕組みを持っており、そのためもあってかナビ画面にそもそも拡大縮小のボタンが存在しない。あと気に入っているのが、自車アイコンを画面の端に寄せすぎておらず、縁からほどよい間隔を空けているところ。他のアプリでは進路上の情報をできるだけ多く表示させる目的なのか、自車アイコンをぎりぎりまで画面の隅に寄せているが、自分はこのような表示の仕方に何となく息苦しさというか、居心地の悪さを感じてしまう。Appleマップのような余裕のある自車アイコンの置き方のほうが自分にはよっぽど好ましい。
そして動作が軽い。iPad miniの最新第5世代(mini5)と3年前の第4世代(mini4)でともに試してみたが、mini4でもmini5と比べほぼ遜色のない挙動が得られる。GoogleマップはほぼAppleマップと同程度に軽快だが、Yahooカーナビをmini4で使うと明らかに挙動が重くなり追従性能が低下する。カーナビタイムではさらにそれが顕著で、mini4だと地図の回転が大幅に遅れるし、音声案内で「○○メートル先…(数秒)…右方向です」のように妙な間がしばしば空く。正直これらふたつのアプリはmini4では使いづらい。またGoogleマップは軽いのはいいとしてもしばしば距離を優先するあまり平気でドライバーを悪路に誘導する。mini5に買い替えてから押入れの肥やしになっていたmini4をナビ専用端末として活用したい自分としてはそのような点からもAppleマップに期待するところは大きい。
色合いは全体的に淡白だが必要な情報はきちんと濃い色で表記され見やすい。そしてこれは地味にすごいがそこそこ長いトンネルを通っていてもロストすることなくしっかり追従する。あとは目的地の検索能力や経路の選定能力を高め、音声案内をもう少し流暢にしてくれればおおむね自分にとっては満足できるアプリになると思う。いい出来になれば月数百円の課金を支払ってもよい。あ、もちろん重くなるのはNG。
リリース当初に酷評されたせいなのか、いまだに地図アプリとしてもナビアプリとしてもほとんど比較検討の対象とすら見なされていないきらいのあるApple純正マップアプリ。アップルさん、いいの作って見返してやりましょうよ。